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小説『あの日の言葉』

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第1章 日常 「もう、ダメだ…」 朋子は、デスクに突っ伏してため息をついた。今日も残業だ…。化粧品会社の営業部で働いて3年になるが、なかなか思うような成果を出せていない。数字に追われ、お客様との関係構築に悩み、毎日が同じことの繰り返しのように感じていた。 上司の高田課長は、普段は寡黙で、部下への指示も最小限。頼りなさを感じることが多く、朋子はどこか物足りなさを感じていた。もっと積極的に指導してほしい、何かアドバイスが欲しい、そんな風に思っていた。 「ちょっと話があるんだけど…」 突然、後ろから声がした。振り返ると、高田課長が立っていた。何か言われるのだろうか、と不安がよぎった。 「あの、来週の新商品のプレゼン資料、もうできてるかな?」 高田課長は、いつも通りの落ち着いた声で尋ねてきた。 「はい、まだ途中です。もう少しで完成します」 朋子は、少し硬い表情で答えた。 「そうか。頑張ってくれ」 高田課長はそれ以上何も言わずに席に戻っていった。 いつも通りの淡々としたやり取りに、朋子は少しがっかりした。もっと何か言ってもらえないものかと期待していたが、特に何もなかった。 「やっぱり、私には期待してないのかな…」 そんな思いが頭をよぎった。 その日も残業は深夜まで続き、ようやく仕事を終えた朋子は、疲れた体を引きずって帰宅した。ベッドに倒れ込むと、明日への不安が頭をよぎった。 「このままじゃダメだ。もっと集中しないと…」 そう心に誓いながら、朋子は眠りについた。 第2章 大きなミス 翌朝、出社すると、社内はいつもと変わらない様子だった。しかし、朋子の心は晴れない。昨日の高田課長とのやり取りが頭から離れない。 「もっと集中しないと…」 そう自分に言い聞かせながらも、やる気が出ない。机に向かっても、書類に目がいかない。そんな中、上司の高田課長から呼び出された。 「ちょっと話がある」 心臓がドキドキと鳴り響く。何か言われるのではないか、と不安でいっぱいだった。 「あの、昨日のお願いした資料ですが、まだできていませんか?」 高田課長は、いつものように冷静な声で尋ねてきた。 「すみません、まだ完成していません。もう少し時間が欲しいです」 申し訳なさそうにそう答えると、高田課長は何も言わずに頷いた。 そしてその翌週、大事なお客様へのプレゼンテーションがあった。朋子は、緊張しながらプレゼン資...

小説『虚像に囚われた呼び声』

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第1章: 孤独な日常 23歳のサラリーマン、浩太は他の同世代と比べて少し異質だった。彼女いない歴=年齢の23年。職場では女性社員と話すこともなく、黙々と仕事をこなしているだけで特に目立たない存在だ。地味で無口な彼にとって、仕事は単なる義務。誰とも深く関わらない、そんな日々を淡々と過ごしていた。 仕事が終わると、すぐに自宅へと帰るのが彼の習慣だ。職場の付き合いも最低限に抑え、飲み会にも参加しない。家に帰ると、まずパソコンの電源を入れる。そして得意なAIを使って画像生成を始めるのが、彼の唯一の趣味だった。AIが描き出す完璧な美女たち。どれも現実には存在しないが、彼にとってはその非現実こそが心の安らぎだった。 「現実の世界では無理だ…」と彼は心の中で呟く。現実の女性に対する関心はほとんどない。これまで誰かと深く関わったこともないし、特に興味を持ったこともない。現実には存在しない美しさを求める彼にとって、AIが作り出す完璧な美女たちは理想そのものだった。 休日も同じだ。友人や同僚が外で楽しんでいる間、浩太は部屋にこもってAIを操作し、美女を生成し続ける。彼にとっては、それが一番楽しい時間だった。会社では無表情で冷淡に見えるかもしれないが、パソコンの前では一瞬でも夢のような世界に逃避できる。そこに現実の女性は必要なかった。 そんな彼にとって、特に刺激のない平凡な毎日が続いていた。朝は会社に行き、帰宅したらAIの世界に没頭する。その繰り返しだった。現実の生活には何の期待もしていないし、誰かと関わることで傷つくことも恐れていた。 そんな日々の中、浩太は自分の生活がこれからも変わることはないだろうと思っていた。しかし、そんな彼の平穏な日常は、ある日突然に崩れ始める。いつものようにAIで美女を生成していた時、会社の同期である女性社員、果歩にその姿を見られてしまったのだ。 第2章: 偶然の露見 その日、昼休みのオフィスは静かだった。浩太は誰もいないのを確認して、会社のPCでこっそりとAIを起動し、美女を生成していた。自宅ではないため、少しだけ緊張感があったが、いつも通りAIの操作に没頭していた。生成された美女は完璧で、浩太は画面に釘付けになっていた。だが、その集中力を破るかのように、突然背後から声が聞こえた。 「何してるの?」 驚いて振り返ると、そこには同期の女性社員、果歩が立っていた...

小説『心と体が入れ替わる奇跡の1週間』

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第1章: 運命の出会い 25歳の透(トオル)は、IT関連企業で働くプログラマーだ。彼は端正な顔立ちにセットされた髪とスリムな体型で、都会的で洗練された雰囲気を持ち、職場でも一目置かれる存在だった。透は賢く計画的な性格で、仕事も生活も効率的にこなすタイプだ。その日も、仕事の合間に昼食を取るためにオフィスを出て、街を歩いていた。 しかし、透は歩いている途中で急に体調が悪くなり、めまいがして倒れそうになってしまった。目の前がぐるぐると回り、足元がふらつく。倒れる寸前に、透は誰かが駆け寄ってくるのを感じたが、意識はすぐに途切れた。 その時、偶然近くにいたのが、建設現場で働く同い年の鉄也(テツヤ)だった。鉄也は、中学を卒業してからずっと現場で働いており、毎日汗水たらして肉体労働に励んでいた。彼は強靭な肉体とタフな精神力を持ち、自分の仕事に誇りを感じていた。しかし、透のように賢くて華奢な男を見ると、無意識のうちに反感を抱いてしまうのだった。だが、この時ばかりはそんなことを考える余裕もなく、倒れた透をすぐに助け起こし、救急車を呼んだ。 「おい、大丈夫か?」鉄也は透の肩を軽く揺すりながら声をかけたが、透は意識を失ったままだった。彼は救急車を待ち、その間も透の意識が戻ることを祈り続けた。 やがて救急車が到着し、透は病院へと運ばれた。鉄也は道路に落ちた透の携帯電話を拾い、病院まで付き添った。彼は普段は無骨で、あまり人に優しさを見せるタイプではなかったが、この時ばかりは透を放っておけなかった。 病院に到着してからしばらくすると、幸いにも透は意識を取り戻した。医師によると、疲労からくる貧血が原因だったという。透は目を覚まし、周りを見回すと、自分の側に立っている鉄也の存在に気づいた。 「…ここは、病院?」透はかすれた声で尋ねた。 「ああ、救急車で運ばれてきたんだ。俺が呼んだんだよ」と鉄也が答える。 透は少し驚きながらも、鉄也に感謝の意を伝えた。「ありがとうございます…助けてくれて、本当に感謝します。」 しかし、透は鉄也のような体格ががっしりしたタイプの男性が、少し苦手だった。普段、透はオフィスで働く同僚たちと接することが多く、肉体労働に従事するようなタイプとはあまり関わりがなかった。それでも、透は鉄也に礼を尽くすべきだと考えた。 一方で、鉄也も透に感謝されていることに対しては何とも言えない複...

小説『知らぬ間に変わる心と姿』

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第1章: 社会人の第一歩 春の柔らかな陽射しが降り注ぐ朝、22歳の陽(ヨウ)は、新しく社会人としての一歩を踏み出した。彼はスーツ姿で、緊張と期待が入り混じった表情で会社の玄関をくぐる。入社初日、研修や挨拶が続く中で、少しずつ社会の厳しさを実感しつつあった。 陽は、中性的な顔立ちが特徴だった。高校生の頃から、彼は自分の外見について少し意識することがあった。友達からは「可愛い顔してる」と言われることが多かったが、特に嬉しい訳でもなく、ただ受け流していた。 会社の雰囲気は和やかで、同僚たちも優しく、陽はすぐに職場に馴染んでいった。しかし、ある日突然のイベントの知らせが彼を驚かせた。毎年恒例の社内イベントで、新入社員が仮装をするのが伝統だというのだ。陽は、一瞬何をするのか理解できなかったが、先輩社員の奈緒が「今年のテーマは女装よ!」と明るく言ったとき、彼の頭は真っ白になった。 「え、女装ですか?」と陽は思わず聞き返した。しかし、既に決まっていることに反対することもできず、彼は女装をすることになった。女装には全く興味がなかった陽だが、イベント当日、ウィッグを被り、メイクを施され、女性用の服を身にまとった自分を鏡で見た瞬間、なんとも言えない気持ちになった。 「結構似合ってるじゃん!」と他の先輩たちからも褒められ、陽は少し照れながらも、その姿を受け入れた。普段は見慣れた自分の顔が、まるで別人のようで、しかも結構タイプな女性に見える不思議な感覚に、彼は少し嬉しくなった。 第2章: 謎の魅力 イベントが無事に終わり、日常が戻ったある日、陽は自宅でリラックスしながらSNSを眺めていた。ふと目に留まったのは、可愛らしい女性の写真だった。彼女の大きな瞳や整った顔立ち、そして自然な笑顔に、陽は一瞬で引き込まれた。 「すごく可愛いな…」そうつぶやきながら、陽はその女性のプロフィールをクリックした。しかし、彼はすぐに驚くことになる。なんと、その女性は男性であり、女装を趣味としているというのだ。 「嘘だろ…?」陽は思わず画面を二度見した。彼女、いや彼の女装は非常に完成度が高く、陽はその技術やセンスに驚きを隠せなかった。だが、それ以上に彼が感じたのは、自分がその美しさに惹かれているという事実だった。 陽は混乱しながらも、その男性の投稿を遡り、次々と写真を見ていった。彼の女装は、まるで本物の女性のよう...

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