小説『知らぬ間に変わる心と姿』
第1章: 社会人の第一歩 春の柔らかな陽射しが降り注ぐ朝、22歳の陽(ヨウ)は、新しく社会人としての一歩を踏み出した。彼はスーツ姿で、緊張と期待が入り混じった表情で会社の玄関をくぐる。入社初日、研修や挨拶が続く中で、少しずつ社会の厳しさを実感しつつあった。 陽は、中性的な顔立ちが特徴だった。高校生の頃から、彼は自分の外見について少し意識することがあった。友達からは「可愛い顔してる」と言われることが多かったが、特に嬉しい訳でもなく、ただ受け流していた。 会社の雰囲気は和やかで、同僚たちも優しく、陽はすぐに職場に馴染んでいった。しかし、ある日突然のイベントの知らせが彼を驚かせた。毎年恒例の社内イベントで、新入社員が仮装をするのが伝統だというのだ。陽は、一瞬何をするのか理解できなかったが、先輩社員の奈緒が「今年のテーマは女装よ!」と明るく言ったとき、彼の頭は真っ白になった。 「え、女装ですか?」と陽は思わず聞き返した。しかし、既に決まっていることに反対することもできず、彼は女装をすることになった。女装には全く興味がなかった陽だが、イベント当日、ウィッグを被り、メイクを施され、女性用の服を身にまとった自分を鏡で見た瞬間、なんとも言えない気持ちになった。 「結構似合ってるじゃん!」と他の先輩たちからも褒められ、陽は少し照れながらも、その姿を受け入れた。普段は見慣れた自分の顔が、まるで別人のようで、しかも結構タイプな女性に見える不思議な感覚に、彼は少し嬉しくなった。 第2章: 謎の魅力 イベントが無事に終わり、日常が戻ったある日、陽は自宅でリラックスしながらSNSを眺めていた。ふと目に留まったのは、可愛らしい女性の写真だった。彼女の大きな瞳や整った顔立ち、そして自然な笑顔に、陽は一瞬で引き込まれた。 「すごく可愛いな…」そうつぶやきながら、陽はその女性のプロフィールをクリックした。しかし、彼はすぐに驚くことになる。なんと、その女性は男性であり、女装を趣味としているというのだ。 「嘘だろ…?」陽は思わず画面を二度見した。彼女、いや彼の女装は非常に完成度が高く、陽はその技術やセンスに驚きを隠せなかった。だが、それ以上に彼が感じたのは、自分がその美しさに惹かれているという事実だった。 陽は混乱しながらも、その男性の投稿を遡り、次々と写真を見ていった。彼の女装は、まるで本物の女性のよう...